JASRACが職員を主婦と偽って音楽教室に2年間も潜入調査させていたことがわかり、問題視されていますね。JASRACの使用料の仕組み、申請法、裁判歴などを調べました。
目次
JASRACとは?
JASRACとは「日本音楽著作権協会」の略称です。
JASRACは、作詞者や作曲者から直接、または音楽出版社を通じて、楽曲の著作権を預かって管理しています。
楽曲を利用したいレコード会社や放送局、ライブハウスなどは、楽曲の作詞者や作曲者に直接許可をもらうのではなく、JASRACに申請して利用許諾を求めることになっています。
JASRACは、このような楽曲の利用者から著作権使用料を徴収して、作詞者や作曲者などに分配しています。
JASRACの問題点とは?
ところが、JASRACがライブハウスや飲食店から徴収した著作権使用料が作曲者らに正確に分配されていないのでは?という問題が、多くの人から指摘されています。
楽曲の利用回数が正確にはわからないため、一部の店でサンプリング調査を行い、その結果を元に「推定」で回数を決めているため不明瞭だという指摘です。
ライブハウスやイベンターさんが申請しているのに、ただしく作家に還元されていないと指摘されています。
申請データも記録として残していないか調査もできませんとのことです。
当初から大もめだった音楽教室からの使用料徴収
2017年にJASRACは、2018年1月1日から音楽教室での使用料の管理を開始すると発表していました。
それに反発したヤマハや河合楽器をはじめとする250の音楽教室が、2017年6月20日に「音楽教育を守る会」という名前で東京地裁に提訴。
「音楽教育を守る会」が文化庁長官に訴えていったんは延期となりました。
しかし、裁判の結果が出ないまま音楽教室での使用料の管理は2018年4月1日からと発表され、音楽教室側との対立が続いていました。
JASRACは、この裁判に絶対に勝ちたいと思って職員を主婦と偽ってバイオリン教室に通学させました。
まさか2年前に通学を始めた生徒の中に覆面調査員がいたとは、音楽教室側にしてみればだまし討ちにあったような気持ちでしょうね。
今後、新しい生徒を受け入れる際に、「もしかしてこの人も覆面調査員なのでは?」などと疑ってしまうこともありそうです。
それにしても、生徒だと思って一生懸命教えていた先生が気の毒です。
2年間通っていたとのことなので、他の生徒さんと仲良くなって授業の後に一緒にお茶を飲んだりしたかもしれません。
友達だと思っていた他の生徒さんも裏切られた気持ちなるのではないでしょうか。
この職員は、裁判で「コンサートのようにとても豪華に聞こえた」などと陳述して商用利用の証拠だと訴えたそうですが、主観的な意見なので裁判の証拠とするにはどうでしょうか。
もし学校の授業で私の曲を使いたいっていう先生や生徒がいたら、著作権料なんか気にしないで無料で使って欲しいな。https://t.co/34ocEwCj8K
— 宇多田ヒカル (@utadahikaru) 2017年2月4日
JASRACは個人教室からも使用料を取る!
JASRACのサイトによると、管理体制が整ったら個人経営の音楽教室からも使用料の徴収を開始するそうです!
対象は、ホームページなどで広く不特定多数の生徒を常時募集している教室だそうです。
ブログに「生徒さん募集中です」と書いたら、不特定多数の生徒を募集したことになるんでしょうか。
すごくあいまいな基準ですね。
もめそうな匂いがぷんぷんしますw
楽器教室から使用料を取る理由は「不公平だから」
JASRACは、カルチャーセンターやカラオケ教室からも使用料を徴収しているそうです。
同じ音楽教室でありながら、楽器教室からだけ使用料を徴収しないのは不公平だからという理由だそうです。
2011年4月からフィットネスクラブ
2012年4月からカルチャーセンター
2015年4月から社交ダンス以外のダンス教授所 (社交ダンス教授所は1971年から)
2016年4月からカラオケ教室、ボーカルレッスンを含む歌謡教室(JASRACサイトより)
ダンスにもいろいろな種類がありますが、社交ダンス教室だけが70年代から使用料をお支払いしていたんですね。
ほかにも気になる規定がありましたのでご紹介します。
・手続きの日がいつであるかにかかわらず、使用料は2018年4月1日に遡って支払わなければいけない。
管理開始が2018年4月1日からとされていたので、何があっても2018年4月1日からのようです。
・すでに許諾手続きを得ているCD、DVD、楽譜であっても、利用方法ごとに使用料を支払わないといけない。
たとえば、複製の許可を得ていても、演奏の使用料は別だそうです。
学校での使用や、クラシックなど著作権切れの曲には使用料は発生しないそうです。
仮に裁判でJASRACが敗訴した場合は、支払った使用料を返金するそうです。
それなら、裁判が終わってすべてクリアになってから徴収すればいいのにと思いませんか?
自分の曲が演奏できない
自分の曲を自分で演奏したのに著作権使用料を支払ってもらえないという問題も起きてしまっています。
シンガー・ソングライターの のぶよしじゅんこさん ら3人が、自分で作詞・作曲した楽曲なのに、使用許諾を拒まれてライブが開けず精神的苦痛を受けたとして、JASRACを相手取り、計385万円の損害賠償をもとめる訴訟を東京地裁に起こしています。
のぶよしさんが2016年5月、東京・八王子市のライブハウス「X.Y.Z.→A」でライブを開催するために、自分で作曲した曲6曲を含む12曲の演奏申し込みを行ったところ、JASRACに拒否されてライブが開けなかったそうです。
なぜこんなことが起きてしまったのでしょうか?
ファンキー末吉さんのJASRACとの闘い
のぶよしさんがライブを開催しようとした「X.Y.Z.→A」は、JASRACと裁判で争っていた爆風スランプのファンキー末吉さんが経営に関わっているライブバーだったのです。
また、のぶよしさんは2016年10月、別のライブハウスで行ったライブについてJASRACに利用許諾を申請したところ受け付けてもらえず、さらに分配も一切なかったそうです。
これは、JASRACにたてついているファンキー末吉さんと仲良くするミュージシャンはこうなるという見せしめのように感じてしまいますよね。
ファンキー末吉さんとJASRACの間に何があったのでしょうか?
ファンキー末吉さんが2009年5月に「X.Y.Z.→A」を開店してからしばらくして、JASRACから著作権料の支払いを求める手紙が届いたそうです。
その料金徴収法が不可解で、ファンキー末吉さんのバンドが10年で300本ぐらいライブをしているのに印税が全くないのはおかしいと疑問を持ち、時代に合った徴収方法をと訴えてきました。
しかし、2012年にJASRAC側からファンキー末吉さんに調停が申し立てられ、不成立となったことから2013年にJASRACがファンキー末吉さんを提訴。
ファンキー末吉さんがあまりにも気の毒だとして、「ファンキー末吉 支援者の会」が立ち上がりました。
ファンキー末吉さんのライブバー、「X.Y.Z.→A」は2017年に閉店に追い込まれてしまいました。
2017年7月11日、JASRAC勝訴の知財高裁判決が確定。
JASRACが音楽教室への徴収を強化していった時期とかぶりますね。
まとめ
JASRACは、カルチャーセンターやカラオケ教室からも使用料を徴収しているのに、楽器教室からだけ使用料を徴収しないのは不公平だから徴収するそうです。
「音楽教育を守る会」との裁判は続行中で、覆面調査員を潜入させたのは裁判に勝つためのようです。
仮に敗訴した場合は、支払った使用料を返金するそうです。
「音楽教育を守る会」は企業の集まりですので、十分な準備をして裁判に臨んでいると思います。
今後の展開に注目していきます。