電通が「アマビエ」を商標出願していたことが明らかになり、反発が起こっています。電通は「アマビエ」を登録できるのでしょうか。また、すでに多数の会社が「アマビエ」に関する商標を出願していましたのでいくつかご紹介します。
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目次
電通が「アマビエ」で独占しようとしているのはどんなサービス?
出願日:2020-06-15
出願人:株式会社電通
区分:第9類(機械器具) ほか3
商品役務:アプリケーションソフトウェア ほか188
OCRテキスト:アマビエ
続き https://t.co/nJ47mxAcMe pic.twitter.com/XncbvkHB03— 商標ウォッチbot (@tmark365) July 4, 2020
特許庁が公開している情報によると、電通は
アプリケーションソフトウェアなどの第9類、
広告業などの第35類、
電気通信などの第38類、
インターネット上のポータルサイトの提供などの第42類
の区分に「アマビエ」の商標出願を行っていました。
「アマビエ」に関する商標は、他にも12件も出願されていましたが、
どれも「お菓子」「酒」「被服」などの商品をターゲットにした出願が多く、
電通のようにソフトウェアや広告業、ポータルサイトなどのサービスの分野で
「アマビエ」の商標を取ろうとしている企業は見当たりませんでした。(2020.7.4現在)
電通はライバルのいない分野で「アマビエ」の権利を独占しようとしているのでしょうね。
「アマビエ」に関する商品はもう売れなくなる?
「アマビエ」を商標出願中の他の会社の一部をご紹介します。
(J-Platより)
どれも今年の4月以降に出願されていて「審査待ち」の状態でしたので、
まだ実際に登録されたものはありません。
「アマビエ」に関する商品はもうたくさん出ていますよね。
このたくさんの商標出願が、すでに出ている商品に影響があるのか見てみました。
いちばん多く見られるステッカーは第16類ですが、
第16類に出願している企業はなかったのでセーフのようです。
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次に多いTシャツですが、これは被服なので第25類になります。
第25類の区分に「アマビエ」を出願している企業は複数ありました。
その中で最も早く出願した企業が商標登録に成功したら、
「アマビエ」のロゴの入ったTシャツなどの服を売ろうとする会社はすべてこの企業にライセンス料を支払わないといけないことになりますね。
これは結構大きなインパクトになりそうです。
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「アマビエ」の商標を出願している企業は、
電通以外は中小企業が多いようでした。
もし商標が取れたら一発逆転ということなのでしょうね。
「アマビエ」商標出願の公開が異常に早い
通常、商標は出願してから1~2か月で公開されます。
しかし、「アマビエ」関連の用語の出願を見てみると、
通常の商標出願に比べて非常に早いスピードで公開されているものが多いのが目に留まりました。
ちなみに、電通の「アマビエ」出願は6月15日で、公開は6月30日です。
他の出願もおおむね2週間前後で公開されているものが多いようです。
これは、特許庁が類似の商標出願が相次いでいることに配慮して、
先に出願している企業がいることを
他の企業にいち早く知らせようとしているのではないでしょうか。
伝統文化の商標登録に対する特許庁の考えは
特許庁は、
「歴史的・文化的・伝統的価値のある標章からなる商標登録出願の取扱い」
という資料を掲示していて、その中で、
「文化的所産等を表す標章からなる商標については、
商標として独占権を付与すべきか否かの公益的観点から、検討を行う」
としています。
広く一般に知られている文化遺産は、「本当にこの1社に独占させていいの?」という点から慎重に審査します、ということですね。
しかし、伝統的な用語を使うとどんなものでも却下かというと、そうではないようです。
特許庁がわかりやすい例を挙げていますので、かいつまんで引用しますね。
◆世界遺産として有名な「サクラダファミリア」という用語を
航空機を指定商品にして商標出願した場合、
⇒世界遺産の「サクラダファミリア」と類似性が高いので登録は認めません。
◆「サクラダファミリア」を
被服を指定商品にして商標出願した場合、
⇒世界遺産と混同する人はいないので登録を認めます。
こういった考え方になるようです。
ただ、山梨県の伝統的行事である「吉田の火祭り」や
甲州のお祭りの 「よっちゃばれ踊り」のように
商標登録された後、観光業者などの異議申し立てによって取り消された商標もあります。
石蔵酒造株式会社の「アマビエ77」や「アマビエ65」のように、
特定の商品を指すことが明らかなものは却下する理由がないので、
おそらく却下されないのではないでしょうか。
アルコール除菌剤の不足していた時期に、
明るい話題を届けてくれた企業だけに
希望が叶ってほしいですね。
アルコールが手に入らない!という不安の解消に少しでもお役に立てればと、高濃度アルコール商品「アマビエ65」を発売いたします。
商品名には「コロナウイルスが早く終息しますように」との願いを込めました。
もしもの時の時のお守り代わりになれば幸いです。https://t.co/Nh1BrBggAz pic.twitter.com/r2JuZRwuM3— 石蔵酒造/博多百年蔵 (@100_nen_gura) April 25, 2020
なお、特許庁が「文化的に著名かどうか」を判断する際には、
・書籍、教科書等に掲載されていること
・博物館、美術館等において展示がなされていること
・テレビ、インターネット等により紹介されていること
・作者、著者、作曲家等の知名度
から判断するそうです。
「アマビエ」はテレビではともかくとして、
インターネットでは繰り返し紹介されていますので、
ちょっと厳しいかもしれませんね。
もし登録されてしまったら、アマビエの資料を所有する京都大学あたりが異議申し立てを行っていただきたいものです。
(2020.7.6追記)
電通が「アマビエ」の商標出願を取下げたことを明らかにしました。
「取引先のキャンペーンに使うため、権利侵害されないために出願した」のだそうです。
ネットなどで批判が高まってきたのを見て、週明けに取り下げることにしたのかもしれませんね。
電通の出願はなくなりましたが、他の出願にどんな判断が下されるのか見守りたいと思います。
商標出願には人間の欲が凝縮されているようで、意外と面白いですよね!
「アイヌ」を商標出願した中国人の方の記事も是非ご訪問ください。
アイヌを中国から商標出願したのは誰?登録の見込みは?